みなさんは、FIPという言葉を聞いたことがありますか?
FIPとは猫伝染性腹膜炎という病気です。
猫を飼っている人は知っている方も多いかもしれません。
なぜなら、FIPは数年前まで「致死率99%」と言われていたほど大変恐ろしい病気だからです。
私の飼い猫も1歳の時にFIPを発症しました。
現在は治療し元気ですが(治療法はまた別記事で)、
当時は死んでしまうかと不安で不安でいろんな情報を調べ漁りました。
その時得た知識なども交えながらFIPについて解説していきますので、
皆さんの猫ちゃんの「もしも」のために読んでいただけますと幸いです。
FIP発症の原因
FIPを引き起こすのは、猫コロナウイルスの一形態です。
このウイルスはたいていの猫の体内に存在しており、通常だと軽度の消化器症状や無症状の感染を
引き起こす程度であり、そこまで恐れるようなものではありません。
しかし、ある条件下で変異し、免疫系と複雑に相互作用することでFIPを引き起こす可能性があります。具体的には、ウイルスが体内で変異し、マクロファージ(一種の白血球)に感染する能力を獲得すると、病態が進行します。
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FIPが大変やっかいなのは、猫コロナウイルスの変異がなぜ起きるのかが今だ不明という点にあります。
過度のストレスがかかった場合などに変異するというのが有力説ですが、確証はありません。
ちなみに私の猫がFIPを発症したのはおそらくストレスによるものだと思います。
というのも発症する2か月ほど前に、私は仕事の関係で大阪から東京へ引越しをしていました。
引っ越しの際、猫を新幹線に乗せて大移動を行ったうえ、家具もほとんどを新調してしまいました。
猫にとったら相当なストレスを与えてしまっていたと思いますし、当時の私は無知だったと本当に反省しています。
この出来事があってから、猫のストレスに対して最大限配慮して過ごすようになりました。
FIP発症を確実に抑えることは現状できませんが、ストレスがかからないよう注意を払って過ごすのがいいかと思います。
FIPの分類
FIPはウェットタイプ・ドライタイプの2つに分類されています。
このタイプによって症状や進行スピードがそれぞれ異なるので注意が必要です。
①ウェットタイプ
体内での液体の蓄積が特徴的です。このタイプは比較的進行が早く、症状が急激に現れるため「劇症型」とも呼ばれます。
<主な症状>
腹水または胸水:腹部または胸部に自由液体が溜まります。
これによって腹部の膨満感や呼吸困難が引き起こされます。
呼吸困難:胸部の液体蓄積が原因で、肺が圧迫されることにより発生します。
急激な体重減少と食欲不振:全体的な健康状態の急速な悪化とともに見られます。
持続する高熱:通常の抗生物質や解熱剤に反応しないことが多いです。
<診断>
血液検査:特に高い炎症マーカーや低アルブミン血症など、特定の異常が見られます。
超音波検査:腹部や胸部の液体蓄積を視覚化します。
体液検査:蓄積された液体からサンプルを採取し、その性質を分析することで診断を支援します。
②ドライタイプ
ウェットタイプと比べてより慢性的で、症状が徐々に進行します。
液体の蓄積は見られず、主に体の特定の器官に炎症が局所化します。
初期段階では特異な症状が見られず、FIPだと判断するのが難しいため注意が必要です。
<主な症状>
神経系症状:行動変化、歩行障害、けいれんなど、神経に関連した複雑な症状が現れます。眼の病変:炎症による視力障害や目の痛みが起こることがあります。
非特異的症状:食欲不振、体重減少、発熱、活力の低下など、全身的な症状が見られます。
<診断>
血液検査:炎症の指標や免疫系の異常を示す指標が確認されます。
画像診断:MRIやCTスキャンによって確認します。
生検:確定診断のために、病変が見られる器官から組織サンプルを採取し、病理検査を行います。
ウェットタイプは特に進行が非常に早く、早いと発症から2~3日で死に至ることもあります。
そのため、日頃から飼い主が飼い猫の体調をきちんと把握しておくことが非常に重要です。
一方ドライタイプはウェットタイプと比較すると進行はゆっくりで、数週間~数か月かけて進んでいきます。
しかし、ウェットタイプの腹水のような分かりやすい症状が出ないことが多く、気付いた時にはすでに
かなり進行してしまっていたということもあります。
こちらも飼い主のこまめな体調管理が大切です。
私の猫はドライタイプだったのですが、初期は本当に気づきませんでした。
今思えばですが、若干ボーっとする時間が増えたなと感じたのと、毛並みが少し悪くなった(艶がなくなった)のが変化でした。
たまたまそのタイミングで健康診断があったので、運よく早期発見ができたのですが、
タイミングが悪ければさらに猫を苦しめてしまっていたかもしれません。
ほんの些細な変化も見逃さないようにしたいですね。
治療法
約5年ほど前までは有効な薬もなく、発症したら死を待つのみという大変残酷な病気でした。
しかし、近年研究開発が進み効果のある薬が出始めており、多くの猫ちゃんの命が救われています。
2024年4月時点で、有効とされている薬は以下があります。
①MUTIAN(ムティアン)
GS-441524と呼ばれるFIPの特効薬を模倣し作られた製品です。
猫コロナウイルスのRNA依存性RNAポリメラーゼを阻害することでウイルスの複製を抑制し、
FIPの治療効果を発揮します。
MUTIANを投与することでFIPが完治したケースがいくつも報告されています。
私の猫もこのMUTIANを投与し助かったので、この薬には感謝しかないです。
しかしMUTIANは日本では未承認の薬のため、提供している病院が少なく、値段もかなり高額です。
再発の可能性もあると言われています。
そのためまだまだ流通していないのが現状です。一刻も早く普及して多くの猫ちゃんの命が救われてほしいと願うばかりです。
MUTIANについては私の体験も含め詳細を別で記載いたします。
②モルヌピラビル
こちらは人間のコロナウイルス治療にも使われる薬で日本でも承認されています。
これをFIPにも適用させた新しい治療法です。
モルヌピラビルの一番大きな特徴は費用。MUTIANの1/4程度で購入ができるとのことで、
かなり投与がしやすくなったと話題です。
もしこの価格でFIPが治るなら革命だと思います。
しかし、モルヌピラビルが本当にFIPに有効なのかデータはまだ少なく、積極的に推奨はされていないようです。
また発がん性があるという見解もあり、不明瞭なことも多いのが現状です。
今後の進展を期待して待ちたいと思います。
まとめ
今回はFIPの基礎知識をお伝えしました。
覚えておいていただきたいことは、以下の通りです。
・過度なストレスによって発症する可能性がある
・ウェットタイプ・ドライタイプがありそれぞれ症状が異なる。
進行スピードも異なるが、いずれにしてもかなり早く症状が悪化する。
・ドライタイプは特に症状が分かりづらいため、日頃から猫の様子を注意深く
確認しておく必要がある。
・近年有効な薬が普及しだしており、FIPは治る病気と言われるようになった。
しかし不明瞭なことも多く、注意が必要。
大切な猫ちゃんのためにも、適切な対応をお願いいたします。
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